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海洋生物

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  宇宙から海洋生物を探る

 海には人類の重要な食料資源である海草、魚介類を始め多種多様な生物が生息し、かつ生産されています。近年、宇宙からの海洋観測手法として、海色センサーによる植物プランクトン現存量の観測が注目されています。海洋生態系の中で最も低次に属する植物プランクトンは、大気中から海水へ溶け込んだ炭酸ガス、あるいは深層から供給される炭酸ガス、海中の窒素・リンといった栄養塩、太陽光を得て光合成し、有機物の生産を行っています(1次生産あるいは基礎生産と呼ばれます)。海洋における全ての生物の活動は、基礎生産によって作られた有機物を利用することによって営まれており、その大小はすべての生物生産を左右すると言われています。

 近年深刻化している地球温暖化の主な原因とされているのが、化石燃料の消費や森林伐採などによって増加する二酸化炭素です。温室効果ガスのひとつである二酸化炭素が大気中に増えたことによって温室効果が強化され、そのために温暖化が進行しているものと考えられています。地球上で二酸化炭素がどのように分配されるのか、なかでも地球の表面積の7割を占める海洋が二酸化炭素の変動に対してどのような働きをしているのか未だはっきりとわかっていません。海洋は、常に大量の二酸化炭素を吸収し、放出しています。その年間のやり取りの量(循環する量)は、炭素換算で年間100ギガトンにも及ぶといわれています。海洋への二酸化炭素の吸収は大きく2つに分けられます。ひとつは「溶解ポンプ」と呼ばれ、大気中の二酸化炭素が、海面の表層へ物理的・化学的にとけ込む過程です。酸素や窒素など他の気体に比べると、もともと二酸化炭素は格段に水に解けやすい性質を持ち、海水温度が低いほど、圧力が高いほどよく溶けます。もうひとつは、「生物ポンプ」と呼ばれ、陸上でいえば森林が二酸化炭素を吸収する過程に似ています。これは前述した植物プランクトンの海洋表層での基礎生産過程によって、二酸化炭素を有機炭素に変えて海洋深層へと運ぶ働きのことを言います。海洋表層での生物群集による一連の過程によって、海中の二酸化炭素の分圧(濃度)が低くなり、その分大気から溶解しやすくなります。

 二酸化炭素の最大の吸収源である海洋の炭素循環メカニズムを解明することは、将来の地球環境を予測するためにも非常に重要な課題といえます。そのためにも海洋の植物プランクトンの動態を把握し、基礎生産がどうなっているのか定量的に把握することが必要不可欠です。さらに植物プランクトンは食物連鎖を通じてイワシやマグロなど多くの魚類のエサとなるため、海洋生産性を測る目安にもなります。

 間もなく打ち上げが予定されているADEOS-U搭載のGLIは、OCTSの成果を引き継ぎ、多チャンネルデータや250mの高分解能の機能を持ち、海洋の植物プランクトン濃度、基礎生産量及びその変動の広域観測を行います。衛星を用いた長期にわたる継続観測は、地球温暖化等のグローバルな環境変動のメカニズムの把握や、漁業資源管理等、実利用の面への貢献が期待されています。

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