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海洋物理

海洋物理学は風波やうねりなどの海洋波動から潮流や海流などの流れ、水温や塩分分布などの基本性質やその変動過程を理解する最も基礎的で重要な学問です。海洋と大気からなる地球流体には以下の特徴があります。

  1. 地球を覆う極めて薄い膜であり、太陽エネルギーで動く熱機関である。これは低緯度域で過剰になった太陽からのエネルギーをより高緯度に運ぶ海流や、温暖化された海域で上昇し、冷たい海域で下降することで生じる風の本質を指します。

  2. 海の海面水温分布は大気循環(風)を生じ、風の海面応力は海流を生じるなど顕著な大気海洋相互作用 (Air-sea interaction) がある。これは大気と海洋は一体となったシステムであることを意味し、大気の温暖化や海洋の冷却効果等を指します。

  3. 風や海の流れの大半は複雑に乱れた乱流であり、流体力学の特性である非線形効果が重要になる。これは、風や海流は地図帳の矢印で示されるような単純な流れではなく、非常に複雑で乱れた流れであることを示します。

  4. 長い間・大きい空間スケールを持つ現象には地球の自転による見かけ上の力、コリオリの力 (Coriolis force) が重要な役割を果たす。コリオリ力とは風や海流のような複雑な乱流を鉛直方向に一様化する作用を持つありがたい力で地球流体力学を考える上で非常に重要な力です。

海では大気からの風による海面応力や海水の密度差によって、海流が生じます。海洋大循環は、海水とともに熱や塩分、種々の溶存物質、浮遊生物などを運び、物質の循環や海域特有の水塊の形成に強く寄与し、地球の気候や環境に大きな影響を与えています。さらに、海洋と接する大気は、たえず海洋とエネルギー、運動量、水をはじめとする物質の交換を行なっています。その結果、海洋上の大気中には、様々なスケールの擾乱が発生し、乱流、降水、水の相変化、力学などの仮定が絡んだ非常に複雑な現象を引き起こし、日々の天気変化や気象災害を通して人間生活にも大きな影響を与えます。近年、地球上の生物を守っているオゾン層の破壊に加えて二酸化炭素などの増加による地球の温暖化や、植物を枯らす酸性雨、さらにエルニーニョ等の地球規模での環境変化が深刻な問題となっています。地球上のこれらの現象は、太陽からのエネルギーを原動力に、さまざまな物質とエネルギーがその姿、形を変えながら、循環し、相互に影響しあい、大規模な自然現象として生じたものです。これらの自然現象を把握、解明し、予測をしていくことは、今後の地球環境と人間活動のかかわりを考えていく上で重要なことです。このためには、「地球を一つの系」として捉え、大気、海洋、陸域及びそれらの相互作用として発生する諸現象を、様々な時間スケールで正しく捉え、その変動の仕組みを解明する必要があります。地球の表面積の7割を占める海洋の変動が、地球環境変動にどのような影響を及ぼすのか未だ明らかになっていません。海洋における大循環の変動と力学過程、水塊の形成・維持機構の解明は、大気海洋メカニズムを理解する上で極めて重要であり、地球環境問題貢献への第一歩となります。

現在、海洋物理現象を理解するため、さまざまな衛星観測センサが稼動しています。センサ別の使用用途を以下に示します。

1.水温センサ
 海洋環境の中でも重要な指標である海面水温の広域観測を行います。温度差を可視化できるため、水塊、海洋フロント、渦の時空間分布変動を捉えることができます。海洋フロント・渦は水産資源の宝庫とも言われ、漁業情報データとしても広く用いられています。

2.海面高度センサ
 海水には密度差が存在し、一般には塩分が高い水ほど重く、塩分が低い水ほど軽いとされています。これらの性質の異なる水塊が互いに接するとき、海面に高低差が生じます。海面の高低差を可視化することによって、海洋の渦や海洋フロント等の水塊分布を明確に抽出することができます。海面高度と他のセンサを組み合わせて、海洋の循環流・海洋混合層のメカニズムの解明に利用が期待されています。

3.海上風センサ
 海上風は海面の擾乱を引き起こし、海洋の循環流や鉛直混合、熱収支に非常に重要な役割を果たします。気象観測への貢献のほかに、単独でのデータ利用のみならず、AMSR、GLIなどのデータと併せて解析することにより、水循環、海洋現象の把握に大きく貢献することが期待されています。

参考文献:
海洋物理学概論(関根義彦著, 1995)
    
海と環境(日本海洋学会編, 2001)
地球観測研究センター 地球観測研究センター
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